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金沢地方裁判所小松支部 昭和46年(わ)7号 判決 1971年12月06日

主文

被告人三浦一之を懲役二年六月並びに罰金二〇、〇〇〇円に

被告人田畑武士を懲役六月並びに罰金二〇、〇〇〇円に

各処する。

被告人三浦一之については未決勾留日数中一五〇日を

被告人田畑については未決勾留日数中一〇日をそれぞれ右懲役刑に算入する。

被告人両名が右罰金を完納することができないときは金一、〇〇〇円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。押収にかかる約束手形五通(昭和四六年押第八号の四四ないし四八)のうち各偽造並びに虚偽記入部分はそれぞれ没収する。

理由

(罪となるべき事実)

第一、(省略)

第二、被告人田畑は

一、昭和四五年一二月一〇日ころ、金沢市所在国鉄金沢駅付近において、亡伊藤静夫に対し約束手形一枚を貸して欲しい旨申し向け、同人より同人が前記のように東建材株式会社から窃取してきた同社所有にかかる株式会社南商店振出し、額面金一〇〇、〇〇〇円(別表一の4)記載の約束手形一通を、その賍物であることの情を知りながら交付をうけて保管し、もつて賍物を寄蔵し

二、かねてより、右伊藤並びに被告人三浦の両名より伊藤が前記のように東建材工業株式会社から窃取してきた約束手形の現金化を依頼されていたものであるが、佐津川明春と共謀のうえ

(一) 昭和四五年一二月二六日ころ、豊橋市広小路一丁目四〇番地ヤマサ喫茶店こと有限会社ヤマサ製菓において、別表一の1ないし3記載の約束手形三通(額面合計金二、〇七三、五四〇円)を賍物であることの情を知りながら、これを長尾邦正に交付し、その割引方を申入れて現金化を斡旋し

(二) 同月二九日ころ、岐阜市金華町二丁目一七番地長尾邦正方において、別表一の4ないし26記載の約束手形二三通(額面合計金三、六一五、四二八円)を賍物であることの情を知りながら、これを奥田忍に交付し、その割引方を申入れて現金化を斡旋しもつて賍物の牙保をし

第三、(省略)

第四、亡伊藤静夫は昭和四五年一二月二三日ころ、岐阜県瑞浪市所在瑞浪陶磁器上絵加工工業協同組合事務所において、約束手形用紙一三枚を窃取し、このうちAM08790、AM08791、AM08783、AM08795の四枚の手形用紙の振出人欄、金額欄等に必要事項をほしいままに記入し、もつていずれも瑞浪陶磁器上絵加工工業協同組合代表理事土屋稔振出名義で金額が金八三七、九〇〇円の約束手形一通、金六四二、九六〇円の約束手形一通、金五〇〇、〇〇〇円の約束手形二通を作成して偽造したが、ついで右伊藤と被告人三浦一之、同田畑武士は共謀のうえ、さらに右四通の約束手形に必要事項をほしいままに補充記載して行使しようと企て、昭和四五年一二月二四日ころ、豊橋市広小路一丁目四〇番地ヤマサ喫茶店こと有限会社ヤマサ製菓において、ほしいままに

一、前記約束手形AM08790、AM08791の二通の受取人欄に、いずれも被告人田畑武士においてボールペンで「大研化学工業(株)名古屋出張所」と名記入し、その裏書人欄に、被告人三浦一之においてAM08790については「名古屋市東区東白壁町大研化学工業(株)名古屋出張所長近藤寿孝」と、AM08791については「名古屋市東区東白壁町大研化学工業株式会社名古屋出張所長近藤寿孝」と万年筆で各記入し、その名下に伊藤において「近藤」と刻して丸印を各押捺し

二、前記の約束手形AM08793、AM08795の二通の受取人欄に、いずれも被告人三浦一之において(浪速金液(株)」と黒インクで記入し、各裏書人欄に被告人田畑武士において「名古屋市北区深田町1の38、浪速金液株式会社代表取締役中杉徳兵衛」と万年筆で記入し、その氏名下に伊藤において「中杉」と刻した丸印を押捺し

もつて虚偽の記入をし、ついで前記ヤマサ喫茶店において、右伊藤が情を知らない佐津川明春に対し右虚偽の記入をした約束手形四通をあたかも真正に成立したかのように装つてその割引方を依頼し、これを一括手交して行使し

たものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

一、(被告人三浦一之関係省略)

二、被告人田畑武士につき

判示第二の一、二の各所為につき刑法第二五六条第二項、罰金等臨時措置法第二条、第三条

判示第四の各所為につき刑法第一六二条第二項、第一六三条第一項、第六〇条、第五四条第一項前段後段、第一〇条(AM08790の約束手形に虚偽記入の罪で処断)

累犯の加重につき刑法第五六条第一項、第五七条

刑の併合加重につき刑法第四五条前段、第四七条、第一〇条(判示第四のAM08790の約束手形に虚偽記入した罪の刑に法定の加重)、第四八条

未決勾留日数の算入につき刑法第二一条

労役場留置につき刑法第一八条

没収につき刑法第一九条

別表三

1、昭和三七年一〇月一一日 灘簡易裁判所において懲役一年六月(窃盗罪)

2、昭和三九年一〇月三一日 金沢簡易裁判所において懲役二年(窃盗罪)

3、昭和四二年一〇月一三日 金沢地方裁判所において懲役二年六月(常習累犯窃盗罪)

(別表一、二は省略)

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